2012年6月4日月曜日

全面リフォームを決意した運命の家具

 コマチ家具に出会った直後は、全面リフォームまでする気はありませんでした。何しろまだまだ足りない物だらけ。そのうち、壁紙くらいは… できればカーテンも…。でもそれはいつのこと?? そんなある日、「今日は久しぶりに、すごい家具が入ったんですよ-。マホガニーのミラーバックサイドボードです-。」 どこどこ?? それは見なくては。見るだけならタダですから。
 
 それはお店の地下、降りてすぐの所にいました。幅210cm、高さ200cmの大型ミラーバック。ギリシャの神殿みたいな柱に支えられた上台。一目惚れでした。お金もない、置く場所もないのに、気付いたら、「これ買う!!欲しい!うちに入るかしら??」と叫んでいる自分がいました。
 しかし、いくら一目惚れでも、家に入らない物は買えません。我が家の図面が広げられ、「入るわよ。押入れ潰せば。」 そっか入るんだ!我が家のリフォーム計画が決定した瞬間でした。

 そして、図面上に家具を落とし込みした「ゴールデンプラン」を作っていただきました。その時点では、まだ足りない物もありましたが、「寝室のベッドの足元には、幅140cmくらいのチェスト」「玄関にシューズボックスとして使うホールローブ」「掃出し窓の前にデスク」等と具体的な必要家具を示していただき、出来上がりのイメージが湧きましたし、がんばろうという気持ちになりました。
 
 アンティークの家具は、基本的に1点物ですから、スルーしてしまうと後悔する場合も多々あります。常連のお客様は目が肥えていますし、良い物はすぐなくなってしまいますから、これだと思ったら即決をお勧めします。何でも置けば良いわけではなく、見せる家具、収納家具、と役割が違いますし、他の物とのバランスも重要です。
もし、HPに載っているおうちのような、トータルに計算された空間をお望みならば、「安いから」「置けるから」という理由で安易にご自分で選ばないことをお勧めします。そのような理由で買った物は、後でトータルコーディネートをお願いしようと決意された時、どうしようもなくなる可能性が高く、結局、遠回りになってしまいます。
初めからプランニングをお願いしておけば、家族構成やおうちの収納スペース等も考慮の上、1つめの家具からベストな提案をいただけます。決断力のある方は、お部屋が整うのも早いようです。

 私はどうやら運が強いらしく、希少アイテムも割とスムーズにクリアできました。特に難しいのはベッドとテレビ台で、手に入れるまでに何年もお待ちになる方もいらっしゃいます。とにかく、お店をマメに訪ねて、何事も相談の上、運命の家具に出会えたら即決、これが近道です。

■そして、リフォームへ

 コマチ歴丸5年が過ぎ、私はいよいよ、もう必要な家具がほぼなくなったことに気づきました。コツコツと1つずつ買い揃えて、思えば長かった5年でした。この間に買い揃えた物は、

【玄関】=ホールローブ(下駄箱)、照明、絨毯

【廊下】=グラスキャビネット、ランプ、油絵、照明、ブラケット

【ダイニング】=ダイニングテーブル&椅子、シフォニア、カップボード、絨毯、照明、ランプ、ブラケット

【リビング】=ミラーバックサイドボード、グラスキャビネット、TV台、カウチ、ウイングバックチェア、ネストテーブル、絨毯、油絵、シャンデリア、ブラケット

【書斎コーナー】=デスク&椅子、ホールローブ(本棚)、絨毯、ブリッジランプ

【寝室】=ベッドヘッドボード、ベッドマットレス、ベッドサイドカップボード、ランプ、照明、ブラケット

 こんな感じでしょうか。正直、安くはない金額です。最初にこれだけかかりますと言われていたら、引いたと思います。でも1つずつなら手が届きました。それまでダラダラと服や靴やバッグ、アクセサリーにお金を使ってきたのを一切やめ、とにかくこの5年はインテリアに集中投下してきました。
この5年間に、私より後にコマチ家具にお見えになった方が何人も、家具を揃えリフォームや新築でどんどん素敵なおうちを手に入れていかれました。羨ましかった時も何度もありましたし、我が家はいつできるんだろうと弱気になったこともありました。
 
 リフォームに向け、大きな障害となったのが、ダンナです。理系のダンナはインテリアに興味ゼロ、この5年間、家具は全て私のお給料から買ってきました。値段が高いだの必要ないだの言われたら、1点しかない家具を逃してしまいますから、相談もせず、ともかくゴールデンプランを頼りに突っ走ってきました。途中で何度か、少しでも興味を引くようにウンチクを話したり、コマチ家具に誘ったりしてみましたが、効果はありませんでした。
リフォームとなると、家具を買うのとはケタ違いのお金がかかりますし、こっそり買って倉庫に置いておいてもらうというわけにもいきませんので、揉めに揉めました。我が家の中の揉め事に留まらず、うちのダンナはコマチ家具にも失礼なことを言ってご迷惑をおかけしましたし、双方の実家も撒き込んで、一時は離婚寸前でした。
リフォームを巡っては、金額が張るだけに、似たような話は聞いていました。多くの男性はインテリアに無関心ですから、費用だけ聞くと騙されているのではと思うようです。

 金額が張るのは、材が良いから。壁紙は輸入の紙クロス、アンティークのステンドグラスを入れて作るドアや窓、開口枠や腰板やモールディングも木材で、塗装は後からです。初めから塗装済みの合板は、LDにはほとんど使いません。カーテンも、窓1つずつデザインを考え布を選び・・となると、やはりそれなりの金額にはなります。職人さんも、大工さん、建具屋さん、壁紙屋さん、石屋さん、電気屋さん、水道屋さん、塗装屋さん、とそれぞれのプロに作業を依頼しますので、施工費もかかります。もちろん、コストダウンできるところはするのですが…。例えば我が家の場合、納戸部屋とウォークインクローゼットの壁紙は1,000/1mの塩化ビニールクロス、床材はコルク、洗面室の床材は塩化ビニールタイル、収納棚板には合板を使用予定です。

 これらの差は、出来上がった物を直に見ると一目瞭然で、やはりお金をかけた意味があると素人目にもわかるのですが、ただ単に「リフォーム」という言葉と、かかる金額だけの話では、なかなか理解されないようです。実際、コマチ家具にお見えになる奥様方の中でも、ご主人を説得しきれずにリフォームを断念される方もいらっしゃいます。

 私も、もうできないかなと思いました。ストレスで起き上がれないくらいの眩暈がした日もありました。
 その時、ここで諦めたら、何も変わらないこの家に死ぬまで住むんだ、あんなに惚れ込んだ家具も、入れられないから諦めなければならない-と思うと、じゃあ何のためにこの家にダンナと住んで、何のために働くのか、と全てが空しくなりました。40代半ばになり、お金の大切さも身に沁みる一方で、人生の残り時間も見えてくる年頃です。「どこで誰とどんな生活を送るのか」ということは、人生そのものだと感じました。

 数度の激突の後、内緒で私の実家に1人で相談に行ったダンナは、家具の図面職人だった私の祖父の図面集を父に見せられ、血は争えないと諦めたようです。明治時代、西洋家具図面製作の第一人者だった祖父は、皇室関係の内装プロジェクトのメンバーだったとか。その才能を、残念ながら私は欠片も引き継ぎませんでしたが、どうしてもこれが好き、という好みだけは祖父譲りのようです。改めて祖父の遺した図面集を見ると、今こんな家具があったら欲しいなと思う物ばかり。

 揉めたおかげで、すごく沢山のことを考えましたし、自分のルーツも再認識できました。